[ ← ]
■■■ 空をのぞむその色を特段気にしたことはなかったけれど、大空という言葉で連想するのは遠い青だった。白い雲が流れても、天空の三割にも満たない晴れ、青空とほぼ同じものだった。雲が覆った重苦しい灰色はまさしく曇り空でしかなかったし、日が沈んだ黒は夜空だった。太陽が地平線から出入りする赤とも橙とも紫とも見える空は、朝焼けあるいは夕焼け空だった。 そう。空は青かった、はずだった。 並盛を愛している雲雀は並盛の景色を彩る空もまた愛していたし、並盛の空もまた雲雀のものだったが、興味関心の対象ではなかったから、言い切ってしまうには曖昧だ。 それがいつしか、強くも弱くもある不思議で興味深い子供と関わるうちに、青空と聞いて思い浮かべるのは並盛の空の景色ではなく、笑う彼の背後にどこまでも高く深く澄み渡る情景になっていた。 ────そして大空は、ひたすらに澄んで燃え盛る炎のオレンジだった。 雲雀自身が自覚しない間に、大空という言葉が孕むイメージは、あの子供が宿す覚悟の色に変わっていた。雲もただの現象ではなく、雲雀自身を表す言葉になっていた。 ボンゴレだの守護者だの、余計な修飾語は知らないし受け入れる気もないが、雲雀は確かに雲であったし、雲が漂う大空は、あの子供だった。 もはや空は遠くなかった。 並盛の空は見上げるものだったけれど。 今は雲雀「だけ」の大空ではないけれど、手を伸ばせば届く距離にあることに、雲雀は気づいてしまったのだ。 (18.06.21) |